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カテゴリ:music( 171 )

ジョアン・ジルベルトのギター 驚異的なコード進行

仕事合間をぬって、ギタリスト鳩山薫さんによる『ジョアン・ジルベルト ボサ・ノヴァ・ギター完全コピー』を練習している。

今日はアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「SAMBA DE UMA NOTA SO(ワン・ノート・サンバ)」(正確には、SOのOにアセント・アグードがつく。)を練習する。シンプルなメロディーとして知られるこの曲に、ジョアン・ジルベルトは、日本人(わたしの)のハーモニー感覚では考えつかないようなコード進行をデザインしている。

Aメジャーのサンバは、「ミ」(Ⅴ度)のワンノートからはじまり、B♭7(♭5)で終わり、メロディーが「ラ」(Ⅰ度)へと展開、この展開の最後は普通であればB♭7(♭5)で再び終わってA△7で解決すると考えるが、ジョアン・ジルベルトはB♭△7(メジャー7)に変化させているのである。つまり、7度の音を半音上げて、より軽快なメロディーのサビへと連続させているのである。

こうしたデリケートなハーモニーを1950年代にギターで弾きこなしていたのだから、驚かされる。それも歌を歌いながら。ブラジル人のこうしたハーモニーの感覚を身につけたいものである。

by kurarc | 2019-06-06 21:23 | music

アナ・マリア・ヨペック 『ULOTNE 幻想』

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ポーランドの女性歌手アナ・マリア・ヨペックの最新作『ULOTNE 幻想』を聴いた。ブランフォード・マルサリスとのコラボレーションによるアルバムである。このCDで彼女の音楽世界が完成されたと思わせるような力作である。

今回は特に民族音楽からインスピレーションを受けた曲に力を入れて制作されている。いままでのCDではポーランド語のみが歌詞として付属していたが、今回のアルバムで初めて日本語訳がついた。これで、やっと彼女がどのような歌詞を歌っているのかが把握できることになった。日本に彼女の音楽が定着したことの現れだと思う。

今回のCDはポーランド音楽としか言いようのない透明なハーモニーと独特のモードを選択したメロディーが際立っている。そして、どこか東洋的な響きを感じさせる。このCDで驚いたことは、彼女が声によってインプロヴィゼーションできる能力をもっていて、2曲目の「カジドランスキ森」という曲で、ポレスワフ・レシミャンの詩を引用しながら行っていること。

ブランフォード・マルサリスのソプラノ・サクソフォンの演奏は洗練されていて、CDの完成度はいつもの通り高い。これだけのCDが制作できるという背景には、豊穣な民族文化がポーランドには蓄積されているということなのだろうか。多分、年内に日本でコンサートが行われるだろうから、是非、足を運びたい。

by kurarc | 2019-05-21 00:41 | music

A.C.ジョビン 映画『暗殺された家の記憶』テーマ曲

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ジョビンの『マチータ・ペレー』というタイトルで発売されていたCDは、タイトルが改められ、『Jobim』(上)というタイトルで発売されている。『マチータ・ペレー』は今まで聴いたことのないCDでずっと気になっていたものだったので、買い求めることにした。

収録曲の中に、映画『暗殺された家の記憶』テーマ曲4曲が収録されていて、これがよい。このテーマ曲で初めて気がついたが、ジョビンの実質的に最後のCDとなった『Antonio Brasileiro』の14曲目の名曲「ショーラ・コラサオン(日本語で「泣けよ心よ」といった意)が実はこの映画のテーマ曲であったことがわかった。その他、日本語で言うと、「失われた庭園」、「コーディスバーゴへの列車」、「奇跡と道化」の4曲が収められている。

実は、この「失われた庭園」という曲を伊藤ゴローのCD『ARCHITECT JOBIM』(下)で知り、『Jobim』に含まれていたこともあり、ますます購入したくなったのである。伊藤ゴローのCDは、ジョビン生誕90周年を記念してジョビンに対するオマージュとして製作されたもので、こちらも力作である。

『Jobim』(=『マチータ・ペレー』)は、ジョビンの中で最も評判のよくないCDであったが、実際聴いてみると、確かにジョビンの歌はよくないが、その他、彼のボサノヴァを超えた音楽領域を切り開いたようなCDとなっていて、聴き応えは十分であった。

アサド兄弟が、ギターで「失われた楽園」を弾いているという。そちらも是非聴いてみたいと思っている。

*コーディスバーゴはベロ・オリゾンチの北、ミナス・ジェライス州の街である。わたしが訪ねたオーロ・プレットはベロ・オリゾンチの南に位置する。映画の中でどのような街として取り上げられているのか気になる。


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by kurarc | 2019-05-13 20:02 | music

タクシー・サウダージ 日本人のボサノヴァの姿



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仕事をしながらNHK・FMを聴いていると、秩父生まれでタクシーの運転手をしながら60歳でデビューしたというボサノヴァ歌手、タクシー・サウダージさんの演奏が流れてきた。以前、日本人のボサノヴァは何かボサノヴァらしくない、といったことをこのブログで書いたが、タクシー・サウダージさんの歌とギターはその偏見を払拭してくれるものであった。

すでにYou Tubeなどでも聴くことができるが、秩父という風土の中から生み出されたボサノヴァは、民謡とボサノヴァとの融合のようでもあり、まずは素直な演奏に関心した。また、日本語で歌われた「イパネマの娘」も下手なブラジル・ポルトガル語で聴く演奏より、新鮮であった。

タクシー・サウダージさんは、その風貌もよいが、放浪の末、故郷の秩父に帰り、ボサノヴァを演奏するようになったという経歴の持ち主。その放浪先も、ブラジルやインドなど、私の世代が興味をもった地域と共通する。ギターを独学で学んだというが、そのテクニックもかなりのものである。

こうした音楽は大きくメディアに取り上げてほしくないが、一部のコアなファンだけのものにもしてほしくない。ここには気取ったボサノヴァ歌手にはない自然な音楽が感じられて、久しぶりにボサノヴァのあらたな魅力を発見することができた。

by kurarc | 2019-05-02 11:26 | music

マイルズからビル・エヴァンスへ

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平成最期の日は、仕事をしながらジャズを楽しんだ。マイルズ・ディヴィスのCDを初期のものから後期まで年代順に10枚ほど聴いていった。マイルズの実験音楽と言えるようなジャズを聴いて、時代と共に変化していく彼の音楽に圧倒されたが、やはり、弧線にふれるもの、ふれないものに分けられる。弧線にふれるものは以下の通り。

*MILESTONES
*KIND OF BLUE
*BITCHES BREW
*THE MAN WITH THE HORN

マイルズのCDは何百枚も発売されているが、その中で評論家が薦めるものは40枚程度である。そのすべてを聴いた訳ではないが、わたしは『BITCHES BREW』が最も好きかもしれない。マイルズの音楽は以外にも仕事の邪魔をするような音楽ではない。通俗的な調性音楽と異なり、彼の音楽は、「音楽という運動」のようなものだと個人的には思っていて、感情に訴えるよりも、身体に直接働きかけてくるようなクリエイティブな音楽である。

マイルズを10枚ほど聴いた後、先日ドキュメンタリー映画が公開されたビル・エヴァンスの『Walts for Debby』で締めくくる。映画の方は期待外れであったが、ビル・エヴァンスのピアノはマイルズとは異なり、感性、理性に働きかけてくるような音楽か。マイルズの音楽よりは感情にも響いてくるが、邪魔になるような音楽ではもちろんない。

最期の最期は、映画のタイトルにもなったビル・エヴァンスの『Time Remembered』でも聴いて終わることにする。

*以前紹介したが、ジョン・マクラフリンの『Time Remembered』はもうかれこれ25年以上聴き続けている。名盤中の名盤である。

*マイルズ・デイヴィス最晩年のCD『AMANDLA』もよい。特に、「 MR.PASTORIUS 」は泣ける。

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by kurarc | 2019-04-30 22:21 | music

ジャズ・トランペッター トニー・グラウシー(Tony Glausi)

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ビル・エヴァンスの映画が昨日封切られた。最近はジャズ・ミュージシャンの映画が数多く製作されている。ジャズは、映画『LA LA LAND』でもすでに終わった音楽のように紹介されたが、実は、また力を取り戻しているように思う。

わたしも再びジャズの学習を始めた。もちろんトランペットでだが、改めてジャズのフレーズや響きを感覚的につかむこと、ジャズ理論などを頭に描きながら、クリフォード・ブラウンやブッカー・リトル、チャット・ベイカー、フレディ・ハバードらの1950年代の名盤あたりから聴き直している。その中で、若手のジャズ・トランペッターのクリエイティブな音楽にも特出するものが現れてきたことを感じる。その中でも特に注目しているのが、トニー・グラウシー(Tony Glausi)という白人のトランぺッターである。若干24歳の若さで、すでに名盤と呼べるような録音を残している。

わたしがもっているのは、『IDENTITY CRISIS』というCDだが、4曲目にブッカー・リトルに対するオマージュとして、彼の作曲方法からインスパイアーされた曲をつくるなど、多彩な音楽づくりが目につく。感性の豊かなミュージシャンなのだろう。CDの中に曲のコンセプトが平易な英語で書かれていて、好感を持てた。

by kurarc | 2019-04-28 00:25 | music

カルロス・ガルデル 「想いの届く日」

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映画『タンゴ-ガルデルの亡命』のサントラを中古CD店で購入した。音楽の大半はピアソラが担当したものだが、サントラの最後にカルロス・ガルデル(曲)とアルフレッド・レ・ペラ(作詞)作による「想いの届く日」(El Dia Que Me Quieras)が入っていた。

この映画は何十年も前に観たきりで、ガルデルの曲が使われていたことも忘れていたが、わたしはこのサントラをピアソラが演奏した「想いの届く日」のみを聴くために購入したようなものである。ピアソラの曲は悲しいものが多いが、このガルデルの曲は、春の訪れを告げるような曲である。恋人に「想いの届く日」、といった歌詞であり、ピアソラの演奏は、聴き終わった後、春風が過ぎ去っていくような清々しい余韻を残して終わる。

ガルデルとアルフレッド・レ・ペラは共に乗り合わせた飛行機事故で焼死している。タンゴをダンス音楽から歌への音楽へと変革していった二人は、最期まで一緒だったのである。

by kurarc | 2019-04-23 15:53 | music

ジョルジュ・ムスタキ 「ポルトガル」

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高校時代、ムスタキの音楽をよく聴いたことを思い出した。その頃、小椋佳さんがムスタキとレナード・コーエンの歌をよく聴くということを知り、わたしも聴くようになったのである。思えばこれがフランス語に出会うきっかけでもあった。

彼の曲で思い出深いのは、「わたしの孤独」、「希望」だが、彼のベスト盤に「ポルトガル」と題する歌があり、初めて聴いた。これは1974年のポルトガルのカーネーション革命を歌った曲で「植民地帝国に終わりを告げる」といった歌詞が含まれている。

ムスタキは政治的な歌を歌った歌手であったが、その声とメロディーはやさしく、ロックのような過激な音は使わなかった。根は詩人なのだと思う。詩にメロディーをつけたのだ。音の新しさを求める現代人には物足りない音楽に思えるかもしれないが、歌手には二通りのタイプ、つまり、詩人と音楽家の両方が存在していてかまわないと思う。

ムスタキは映画『死刑台のメロディー』にも楽曲「勝利への賛歌」を提供しているというが、わたしは気がつかなかった。今度、映画をみなおしてどのような曲であったのか確かめたいと思っている。

by kurarc | 2019-04-06 14:31 | music

"If You Went Away"   マルコス・ヴァーリ vs 原田知世

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マルコス・ヴァーリのCD『SAMBA '68』(上写真)の中にはいくつかの名曲が収められている。

その一つは、”Summer Samba"という曲。特に、カエターノ・ヴェローゾの『a bossa de Caetano』の第1曲目に収録されているアレンジでわたしは親しんでいる。

もう一つは、”If You Went Away"である。驚いたことに、原田知世さんが『恋愛小説』(下写真)というCDの7曲目でこの曲を歌っている。アレンジがよく、原曲のマルコス・ヴァーリのものより優れているとおもわれるくらいだ。”If You Went Away"は、音程をとるのが難しい曲と思われるが、原田さんはこのメロディーをうまく歌い上げている。

彼女のこのCDはなかなかよい出来で、日本語でうたっているものと声の印象が異なり、大人のCDに仕上がっている。

原田さんにはヴァーリの曲だけでなく、今度はブラジルの曲だけでCDをつくってもらいたい。そして、できればブラジル・ポルトガル語に挑戦してほしいものである。

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by kurarc | 2019-04-02 22:04 | music

空は宇宙の海 松任谷由実 

映画『時をかける少女』を観ていて、最後に同名の松任谷由実の歌が流れる。この歌詞の中に、「・・空は宇宙の海よ・・」という歌詞があるが、今更ながら松任谷由実の歌詞の感性に驚いた。

月のように大気のない衛星は、小さな隕石でも大気の断熱圧縮による加熱(大気摩擦)で蒸発したり、減速したりすることがないため、秒速数十キロという高速で月面に衝突するらしい。月面のクレーターはその傷跡なのである。

海の恵みはわかりやすいが、大気(空)の恵みには気づきにくい。松任谷由実は多分、直感的に「大気に海を感じた」のだと思うが、それは、まったく正しい。名曲と言われ、ずっと歌い継がれる曲には、こうした詩趣に富んだディテールが密かに挿入されているのだと思う。

松任谷由実の『ダンデライオン』には、

「・・傷ついた日々は 彼に出逢うための そうよ 運命が用意してくれた 大切なレッスン・・」

といった歌詞もある。こうした歌詞もなかなか思いつかないし、表現できるものではない。ポジティブな表現であることもよい。

彼女の歌詞だけでなく、現在、ビートルズの歌詞もじっくりと味わってみたいと思っている。最近、ビートルズ研究書が数多く出版されるようになったためであるが、彼らの音楽を無性に聴きたくなってきたからである。

by kurarc | 2019-03-27 17:37 | music