カテゴリ:nature(自然)( 104 )

鳴り砂考

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晴れた日に砂浜を歩くと、クッ、クッ、と音のする砂浜がある。三陸海岸には九九鳴浜や九と九を加えて十八(ぐぐ)鳴浜があるという。このような砂を「鳴り砂」と呼ぶが、こうした浜は、北陸や山陰地方では琴ケ浜、琴引浜などの名前をつけられていることが多い。

『粉の秘密・砂の謎』(三輪茂雄著)には、こうした粉や砂、いわゆる粉体と物理学で呼ばれるエピソードを集めた物理学書であり文化人類学、民俗学書のような書物である。

三輪氏は、「九九」という音から、九十九里浜もこの鳴り砂だったのでは、という推測をたて、調査に行ったのだという。しかし、砂は鳴らなかったが、その砂を研究室に持ち帰り、調べてみると、黒い砂が大量に含まれ、土砂による汚れもひどく、鳴り砂の条件から外れていることがわかった。

しかし、よくよく調べると、砂の主成分であった石英粒は鳴り砂の特性をもっていることがわかった。採取してきた砂を洗浄したところ、見事に鳴いた、という。これは、江戸初期に行われた利根川改修により、もともと東京湾に流れていた川砂がこちらに流れ込んでいたことが原因であったのである。

上のようなエピソードをはじめ、砂や粉にまつわる興味深い話が本書には数多く含まれている。実は、我々のまわりは少し考えてみればわかるが、粉や砂だらけなのだ。抹茶、コーヒーの粉、小麦粉や砂糖などを想像すればすぐわかることである。抹茶も江戸後期に臼でひかれた抹茶が製品として出回る前は、てん茶という茶葉を石臼で飲む前にひいていたのだという。つまり、日本人は「インスタント抹茶」を江戸時代から飲むようになっていたと言えると三輪氏は述べている。

砂丘がつくる模様(バルハン)に興味をもったことから、粉体力学(粉体工学)という学問があることを知ったが、特に砂は文学の題材にもなり、建築資材にかかせない物質でもある。一粒の砂の中に宇宙を感じることができる、そこが粉体という物質、物理対象の興味深いところかもしれない。

by kurarc | 2020-05-20 19:29 | nature(自然)

井の頭公園のムサシノキスゲ(2020 0508)

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午前中、井の頭公園を通り過ぎたついでに、ムサシノキスゲの開花状況をチェックした。

今日が天気も良く、もっとも見頃な日であろう。今年は、昨年より開花している花の数が増えているような気がする。今後、この斜面が一面、ムサシノキスゲ色に染まることを期待したい。

残念なのは、この花の知名度は低いようで、写真を撮影するものも見かけない。絶滅危惧種であることを知らない人が多いのだろう。残念である。

by kurarc | 2020-05-08 15:18 | nature(自然)

ツバメの季節

空を見上げるとツバメが飛行する姿をよく見かけるようになった。

ポルトガル語では”andorinha(アンドリーニャ)”と言い、春を告げる鳥として親しまれているし、よく歌にも歌われる。ツバメは俊敏に動くため、じっくりと見ることはあまりないが、いわゆるツバメといわれる種だけでなく、東京でも運が良ければ、アカハラツバメやコシアカツバメを見ることができるかもしれない。

ツバメの巣は種によってかなり差があるようで、コシアカツバメの巣は天井部につくり、街でみるような通常のお椀型の巣と異なり、中は見えないつくりとなっている。図鑑をみると、日本でもざっと15種ほど確認できるようだ。地域差もかなりある。

ウイルス感染の報道もあり、ストレスがたまるが、こうした野鳥をながめているとそうした気分は吹き飛んでしまう。本当は、山にでも行って自然を眺めたりすることが最も精神衛生上よいのだが、それももう少し、ウイルス騒動がおさまってからにせざるを得ない。

by kurarc | 2020-04-03 23:16 | nature(自然)

富士山噴火と東京

新型コロナウイルスの問題が拡大していることもあるのだろうか、マスメディアの中で、富士山の大噴火が起きた場合どうなるかの報道がながれた。噴火後、およそ3時間で首都機能は麻痺すると予測されるという。

3.11以後、今後最も恐ろしい自然災害は、この噴火、あるいは巨大噴火(破局噴火)であることをこのブログで書いた。(2011年12月1日、12月3日)現在、ウイルスにより感染は拡大しているものの、電気、水道、ガスといったインフラが壊滅しているわけではない。しかし、噴火(巨大噴火)が起こると、こうしたインフラが全滅し、かつ、交通網がすべて遮断され、携帯電話は使用不可能になり、テレビはおろかラジオ、インターネットなどすべての通信網も遮断されてしまうだろう。現在のように日々変化する情報を得ることができなくなることも予想される。

つまり、国家や自治体も麻痺し、頼るのは個人のみ(あるいは近隣)であり、個人が孤立し、自ら命をつなぐしかなくなるのである。水、食料は供給できなくなり、餓死するものがあとをたたなくなり、市民レベルでの紛争や暴動が起こるのは目に見えている。都市の全域での被災となるため、どこから復旧しなくてはならないかの計画も立たず、車をもっているものや移動手段を確保できるものだけが、東京から遠く離れた火山灰の届かなかった地域に避難するしかない。または、大型船による避難も考えられるが、避難できる人数に限界がある。

こうしたことが、今まさに起きても不思議ではないのがこの日本なのである。さらに、首都直下型地震、南海トラフ地震のリスクも加わる。巨大噴火について最も懸念されている地域は、九州と富士山だろうか。九州であっても巨大噴火(破局噴火)がおきれば、成層圏まで噴煙が舞い上がり、この東京まで届いてしまう。

もうそろそろ真剣に巨大噴火のリスクを分析し、根本的な対策を考えなくてはならないが、この対策を国単位、自治体単位では行えないということが、この大災害の特徴なのである。なぜなら、国、自治体が機能できなくなるのだから。よって、我々個人が一人一人、この対策を考え、備えなければならないことになる。


by kurarc | 2020-04-01 14:59 | nature(自然)

ウイルスと都市

新型コロナ・ウイルスの感染が拡大する状況は、建築や都市を改めて見直す貴重な時間をつくってくれている。危機やカタストロフィは、日常のなかで見えなくなってしまった現象を明らかにしてくれるようだ。

イタリアやフランスのように都市の封鎖された現場をテレビなどで見ていると、都市は当たり前のことだが、人間の活動といかに密接に結びついているのかということを考えさせられる。また、日本の子供たちはテレビゲームなどが好きで、外に出たがらないことが多いように思っていたが、いざ、こうした封鎖のような状況になりわかったが、やはり、外で遊ぶという子供ながらの習慣は生き残っていて、部屋の中にこもるということがいかに精神衛生上つらいことか、現代の子供たちも感じていることが理解できたのである。

都市とは、人間という酸素を吸収し、また、それらを排出(人間が家に帰る)していくような往復運動(循環)として捉えられるということが、リアリティをもって感じられた。そして、一個の住宅(建築)が都市の中にある、ということがどのようなことなのか、それは、やはり都市と建築が不可分であり、その往復運動によって、お互いが活気を帯びる装置であり、メカニズムであるということである。

ニュートンが生きた17世紀後半、彼もまたペストを経験し、休学中の大学を離れて、故郷ウールスソープに帰り、その生活のなかで微分積分法や万有引力の概念を発見したという。これらはのちに「創造的休暇」と呼ばれることになった。疫病は、いつの時代も時代の転換期にやってくるようだ。このウイルスの後、どのような新しい時代に変化することになるのか、また、新しい時代を構築していくのかが問われることになるだろう。

*今回の新型コロナ・ウイルスとグローバル化された世界との関連が指摘されるが、実は、14世紀ペストの時代、すでに中国人、鄭和の大航海から、また、ユーラシア大陸の交易路開拓期からグローバル化は始まっていたのである。

by kurarc | 2020-03-30 20:34 | nature(自然)

井の頭公園の冬鳥たち


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「かいぼり」という方法で井の頭公園の池の水は透明感が格段に増した。

今年は冬鳥たちもいつになく多く飛来しているように思う。特に、「オオバン」と「キンクロハジロ」がいつになく多数飛来しているように感じる。温暖なせいか、カイツブリの雛も冬になってもみかける。

画像は、井の頭公園内で配布されているチラシである。市民、有志による開かれた観察(モニタリング)は、以前は皆無であったと思うが、ここ20年くらい盛んに行われている。自然環境の維持は、今後ますます人間の手に委ねられることになる。

個人的には井の頭公園を貫く玉川上水の自然にはまったく手が入っていないのが残念である。井の頭公園のように公園ではないことが、それを妨げているのだろう。親水できるスペースの工夫など、景観に配慮しながら上水を観察できるような場所をつくる必要があるのかもしれない。


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by kurarc | 2020-01-30 10:53 | nature(自然)

春田俊郎著『自然界83の謎 地球が生き残るための知恵』

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春田俊郎先生は、わたしの母校(都立調布北高校)の校長先生であり、生物学者であった方である。その春田先生は晩年に、1973年に出版された『自然界99の謎』を原本として文庫化したのが本書である。

高校時代、山岳部で活動していたわたしは、春田先生が山にも詳しい方だったことから、夏合宿の前など、校長室へ行っては、これから登る山のことを相談に行っていた。高校生では厳しいと思われる山でも、春田先生はただ「行ってらっしゃい」というだけ。わたしたちはその言葉に励まされて、山に出かけていった。

本書は自然の謎について平易な文章でまとめられているが、興味深いのは、第8章に「災害をめぐる自然の謎」という章をもうけていることである。火山、地震、豪雨、台風、洪水、高潮、異常気象、雪崩、雷、火災という項目から構成される第8章は、最近の災害を予見しているように感じられるが、実はそうではない。春田先生は、災害の歴史を遡って記述しており、災害が繰り返されていることを警告しているのである。良識ある科学者であるならば、災害とはいつの日にも起こりうるものであるというのは過去が示している、ということはわかっているはずだが、春田先生はただそのことをとりあげたにすぎない。自然の美しさのみをとりあげるような本になっていないのは、春田先生の自然観からくるものだろう。

また、あとがきに驚くべきことが書かれている。「・・・地球上の人間によく似た宇宙人は存在しない・・・」と春田先生は言っている。それは、物事には因果がからんでいて、この宇宙には地球が存在している要因はここでしかありえない、という考えを春田先生はもっていたようである。どこかに我々と同じような宇宙人が存在するのではないか、と安易に想像してしまうが、確かに、地球が生まれた要因はこの場所でしかありえなかったのではないか、わたしもそう思いたい。

春田先生と山のことだけでなく、自然について議論をしておくべきであったが、そう思うにはあまりにも遅すぎた。偉大な人は意外と身近にいるものなのだ。そんなことを今更ながら思うこの頃である。

by kurarc | 2020-01-27 23:06 | nature(自然)

黄金分割は美しいか?

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最近、You tubeをよく利用する。この中では、大学、あるいは大学院の授業よりもためになると思われる講座が数多くある。特に、音楽に関して多くのことを学ぶことができるが、たまたまジェネラティブアートの講座に出くわし、巴山竜来氏というジェネラティブアートの本(上)を出版した数学者の講義が目についた。

その講義の中で、「黄金分割は美しいか?」といった解説があり、興味深く聴講した。建築の世界では、イタリアの建築家ジョゼッペ・テッラー二の「ダンテウム」のなかに登場する黄金分割が有名だが、たとえば、ある絵画の中に、あるいは構図の中に黄金分割が潜んでいる、というような場合、厳密に小数点以下5桁、6桁までを我々は把握し、美しいと言っているわけではない。

巴山氏は、それを数学者らしく、代数式に置き換えて理解する方法を提示していた。

黄金分割(黄金数) φ=1+1/φ 

を満たす数φである。このとき、φは、自らの定義の中に自らの数を含む、再帰性をもつ数である。上式の右のφに1+1/φを代入していくと、無限に1とφが連続するような数式(連分数)が描ける。このことは自己相似性へとつながるような数を意味していることになる。いうまでもなく、自己相似性は自然界の中に潜む数学の代表的な法則といえるものである。

感覚的に美しいと思うものも、実はその中に美しさを証明するような数式が潜んでいるということだが、そう言われても、やはり美しさとは何かについて理解できたとは思えない。そもそも「美しい」という言葉を人間はなぜつくったのだろう?

「美しさ」は時代により変化する概念でもある。よって、22世紀頃になれば、「美しさ」も変化することは目に見えている。少なくとも「普遍的な美しさは何か」を問うことは間違った問いだといえるのだろうが、22世紀の人間も、春の桜や秋の紅葉を美しい、と思うのだろうから、そこには何かがあるはずであるが・・・



by kurarc | 2019-05-17 23:11 | nature(自然)

「キムリア」保険適用

キムリアが保険適用されることになったという。白血病を患う患者さんにとっては朗報なのだろうが、こうしたガン免疫遺伝子治療がガンに確実に効くかというと、どうも疑わしいものらしい。さらに、副作用の羅列をみると、この薬、治療法を使おうと考える患者さんを尻込みさせるような症状が膨大に並んでいるのである。

副作用の一つは、サイトカイン放出症候群と呼ばれるもので、腫瘍を攻撃するサイトカインが正常細胞まで攻撃してしまうというもの。微熱、高熱ほか意識障害や呼吸困難他の副作用が現れるという。

副作用のもう一つとして、重篤な神経系事象が現れるという。精神や脳、神経の不調による症状、錯覚、幻覚ほかの副作用が現れる可能性があるという。

その他、血球減少、低ガンマグロブリン血症、感染症、腫瘍崩壊症候群などの副作用が列挙されている。

以上のような副作用の列挙はどのような薬による治療にも併記されるものだが、これらが風邪薬の副作用のようなレベルを超えている訳だから、キムリアにより治療を選択するか否かについて、患者さんは相当悩まれるはずである。これらの副作用はキムリアで治療する患者さん一人一人に異なる副作用がでることが予想され、医者もどのような副作用がでるのか予測もできないだろうから、正直、「治療してみなければわかりません」と医者から言われることは目に見えていると思われる。

話は変わるが、このような時期になぜ高額な治療薬が保険適用になったのか?もしや、有名なスポーツ選手が白血病になったことと関連しているのではないか、と誰しもが思ったのではないだろうか。そのようなこととは無関係で、偶然だとは思うが・・・



by kurarc | 2019-05-15 21:20 | nature(自然)

ブラックホール

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ブラックホールの撮影(上写真)に成功したというニュースが飛び込んだ。最近の天体に関する業績にはめざましいものがある。天体にうといわたしでさえも、天体に興味が引きつけられる。アインシュタインのことばかりが報道されるが、ブラックホールの入門書などを渉猟していると、そもそもアインシュタイン以前の18世紀、ニュートン力学によって、暗黒天体がイギリスの天文学者ミッチェルやフランスの数学者ラプラスによって不完全ながら考えられていた。

今年はちょうどイギリスの天文学者エディントンがプリンシペ島で日食を観察し、「光の曲がり」を観測、一般相対性理論を実証して100年という記念すべき年にもあたるという。ニュートン力学では水星の軌道計算(水星の近日点移動の問題)が正確に計測することができなかったが、重力の概念を物体間の引力から空間の歪みという概念に変換した一般相対性理論により、その軌道計算が正確に算定されることで、20世紀、ニュートン力学はアインシュタインの力学へ転換することになる。第一次大戦の最中にこうした大きな研究、発見をやり遂げたことは特出すべきことだが、一般相対性理論をいち早く理解し、ブラックホールの存在を予言するブラックホール解を発見したドイツの天文学者シュヴァルツシルトは、第一次大戦の犠牲となったことは天文学の進展に大きな損失を及ぼしたに違いない。

はやぶさといいブラックホールの撮影といい、今年は天文学、宇宙から目が離せない年となりそうである。それにしても、ブラックホールとは本当のところどのようにしてできるのだろう?地球を角砂糖1粒の大きさに圧縮していくとブラックホールができるというが、それはなぜなのか?物質と反物質とはなになのか?宇宙の対称性とはなになのか?etc.・・・宇宙に対する興味が膨らむ1年になりそうである。(以上、『ゼロからわかるブラックホール』(大須賀健著)より)

by kurarc | 2019-04-13 19:36 | nature(自然)