ライトと黄色い煉瓦

ライトと黄色い煉瓦_b0074416_00243422.jpg

『黄色い煉瓦ーフランク・ロイド・ライトを騙した男』というドラマは興味深かった。かなりフィクションも含まれているそうだが、煉瓦職人、久田吉之助を演じた俳優の安田顕さんの熱演は見事であった。

ライトが旧帝国ホテルの外装煉瓦に黄色い煉瓦(上写真、INAXのHPより借用)を要求したという。当時、アメリカには存在したということで、実物もアメリカから送付されたようだ。それにしても、なぜライトは日本で普及していた赤褐色の煉瓦ではなく、黄色い煉瓦でつくることを望んだのだろう?

わたしの勝手な推測であるが、一つは、大谷石との関係(組み合わせ)で、赤褐色のものより黄色い煉瓦の方がデザインとして適していると判断したのではないか?という推測である。ライトは外装に煉瓦と大谷石を使用したが、赤褐色の煉瓦と大谷石の組み合わせが彼にはピンとこなかったのではないか。

また、東京駅など、当時、多くの煉瓦は赤褐色のものが使用されていたため、そうした煉瓦造の建造物に埋もれたくなかった、ということも考えられる。もちろん、単純に黄色い煉瓦が好きだったということもあろう。少なくとも、物理的に強度が高いから、といったような理由ではなさそうだ。黄色い煉瓦は通常の煉瓦より強度は弱かったという事実が知られているからである。

ドラマはかなり誇張されてはいたが、きっと黄色い煉瓦を初めて日本でつくった久田吉之助は、相当な職人気質の人柄であったに違いない。ものづくりには、ある種の狂気が必要だが、現在ではそした熱意をあまり表には出すことを好まれない。しかし、それはただ表に出てこないだけであって、真摯にものづくりに取り組もうとするものであれば、かならずポジティブな意味での狂気がなくてはものはつくることはできない。ものづくりをしたことがあるものであればそれは誰でも知っていることだと思う。ものをつくるということは、対立するものを調整し、まとめていくことが仕事のような行為だから、必然的に難題にぶつかる。それを乗り越えるだけの狂気が必要だということである。

by kurarc | 2020-03-14 00:25 | brick(煉瓦)

浦賀ドック 公開

浦賀ドック(我が国で二つしかない煉瓦積みによるドライドックの一つ)がこの秋、10月1日から24日まで特別に公開され、見学できるようです。煉瓦積み体験など様々なワークショップも催されるとのこと。2009年以来、浦賀には行っていないので、この機会に再度訪ねたい。
煉瓦のイギリス積みやフランドル積み(通称フランス積み)という方法は、本で知ることはできるが、実際どのように積まれるのか経験したことがないので、実感が伴わない。この機会に実物の煉瓦でその積み方を体験したいものだ。


by kurarc | 2010-09-12 09:14 | brick(煉瓦)

山梨 大日影トンネル遊歩道 待避所

brickのカテゴリーの更新は久しぶりとなる。先日の日曜日(21日)、JIA関東甲信越支部の保存問題山梨大会二日目に参加してきたときのエクスカーション時に撮影したものである。
中央本線大日影トンネルは全長1,367.8m。起工は明治30年(1897年)で開通が明治36年(1903年)。廃線になったのは平成9年(1997年)。遊歩道になったのは平成19年3月。起工からちょうど100年目に廃線になり、新たな機能に蘇った明治の近代化遺産である。
煉瓦は地元牛奥村(現甲州市)で造られ、イギリス人技師の指導により造られたこともありイギリス積みにより施工されている。

山梨 大日影トンネル遊歩道 待避所_b0074416_2255125.jpg

by kurarc | 2010-02-25 22:55 | brick(煉瓦)

レンガの大きさと女性の手の大きさ

今日は、清水建設技術研究所(東京都江東区)を訪ね、研究所内部にある建築技術歴史展示室を見学させていただいた。鉄骨造、鉄筋コンクリート造、レンガ造などの近代の技術が、その起源から詳しくまとめられた展示室で、建築を学ぶにはすばらしく充実した展示内容であった。
そのなかで、おもしろいビデオをつくりましたと紹介されたものが、「レンガは女性の手の大きさによって決まった」という内容のビデオであった。テレビ番組のトリビアの泉仕立てにつくられたビデオで、ユーモアのあるなかなか楽しいビデオのできであった。

初めは何のことかと思ったのだが、レンガは当初は西洋から輸入された大きさであり、現在のJISで決定された大きさ210×100×60ミリよりひとまわり大きかった。当時、レンガを仕分けしたりする作業労働の多くを女性が担っていたこともあり、輸入された当時の大きさでは作業に不都合が生じ、レンガを現在のJISの規格と同じ大きさにし、女性でも持ち易い大きさに変えたというのである。

さらに興味深い話は、このレンガの大きさから、我々建築家が使う外壁タイルの大きさが導かれたということ、このようなタイルの外壁の歴史は日本固有のものであるということ等々、現在都市の中でみられるタイル貼りの建物の起源はレンガ造にあるということは思ってもみなかった。レンガの大きさが近代における女性の労働と結びついていたということも感慨深い。このような起源を知るとまた建築がおもしろくなっていく。

by kurarc | 2008-03-05 21:44 | brick(煉瓦)

カテゴリーに"brick"(煉瓦)を追加 No.01:カトリック新発田教会

カテゴリーの中に"brick"(レンガ)を追加した。近代遺産を見学することが多くなり、その中で様々な地方で見かけるレンガ造の建築物、建造物に興味をひかれる。レンガの朱色の色彩もテクスチャーも個人的には大好きである。レンガ造建築は、関東大震災時に多大な被害を受けたこともあり、その後レンガは、表層の装飾として使われて生き残ってきた。震災以前に建造され、したたかに生き残った建築物、建造物もまだ全国に数多くある。近代遺産のキーマテリアルでもあるレンガをいろいろな角度から取り上げて見たい。

まずNo.01は、2月16日、17日に行く新潟・新発田のアントニン・レーモンドが設計したカトリック新発田教会のレンガについて取り上げる。

新潟の新発田でいただいた資料によると、このレーモンドのレンガ壁の厚さは21センチで、壁中に径13ミリの鉄筋(シングル)が挿入されている。腰壁は、レンガを型枠にした鉄筋コンクリート造(壁構造)に近い。レンガは合計約3万3千個が使用されていて、レンガの製造は、新潟県荒船郡荒川町坂町の中山窯業で製作。1300度の高温で焼成したものだという。レンガは見かけ上はいわゆるフランドル積み(大小の反復)に見えるようにデザインされている。個人的には残存するレーモンドの建築物の中で最も優れたものの一つであると思っている。

カテゴリーに\"brick\"(煉瓦)を追加 No.01:カトリック新発田教会_b0074416_21534751.png

by kurarc | 2008-02-10 22:35 | brick(煉瓦)